Has she died or something?

徒然なるままに20代SEの日常

好きの2 階段

 

おばあちゃんちには、手塚治虫の漫画がいっぱい置いてあった。

文庫本サイズで分厚くて、

それを涼しい階段に座って読むのが好きだった。

 

おばあちゃんちは家から近くて、

毎週末はおばあちゃんちで過ごすのがお決まりだった。

金曜の夜から泊まりに行って、

日曜の夜にサザエさんを見てから帰る。

丸々二日間をおばあちゃんちで過ごしていた。

 

本や漫画が好きだと大人が喜ぶので、

読み終わると新しい本をおねだりしていた。

 

そして買ってもらった漫画や本を、

おばあちゃんちの階段に座り込んで読んでいた。

その時は多分、ただ涼しくて。

体も小さかったから、収まりがよかったんだろう。

一度その階段の手すりに頭を突っ込んで、

大騒ぎになったりもした。

別の場所では椅子の背もたれに足を突っ込んで、

やっぱり抜けなくなったこともあるから、

そういうことをする子供だったんだと思う。

 

家に帰ると、家の中には階段がなかった。

だけど、マンションの中に階段があって、

ちょうど私の暮らす階層が階段の一番上に当たる場所だった。

だからそこには屋根がなくて、

見晴らしがとってもよかった。

 

自分の通う小学校が見えた。

天気がいいとそのもっと先も見えた。

 

この階段で漫画を読んだり、

ゲームをするのが好きだった。

 

時々兄弟喧嘩をして、

怒って裸足で家を飛び出しても、

いるのはいつもここだった。

家から数歩しか離れてない階段のてっぺん。笑

 

悲しいことがあっても、

狭い家の中じゃ意地を張って泣けなかった。

妹と同じ部屋で、母もいつも家にいてくれて、

大人の私から見たらとってもありがたい環境だったように思うけど、

私は一人の時間が欲しかった。

 

階段は気持ちがよかった。

階段では大声で歌ったり、泣いたり、

今思えばマンションの中だからだいぶうるさかったんじゃないかと

心配になるけど、小学生の夕焼けどきだったから、

せいぜい4時ごろだったんだと思う。

門限5時だったし。笑

 

どんなに泣いても怒っても、

ママが心配するから、5時には帰る努力をしてた。

時々遅れて、こっぴどく叱られた。

そしたらやっぱり階段に行くしかない。笑

親も階段にいるなら安心だったでしょう…。

 

今はもうそのマンションに住んでいない。

自分の部屋があって、

泣くも笑うも自由だ。

門限もないし、

泣きたい時は一人でどこまででも行ける。

 

でもこの間、

ふと自分が階段に座って本を読んでることに気がついた。

家の中の階段は、

おばあちゃんちにある階段よりちょっと狭くて新しい。

エアコンのついた部屋の方が涼しいし、

ソファに座った方が腰も痛くならない。

でも、階段はなんだか居心地が良くて、

本を読むのにぴったりだった。

 

「本当に階段が好きだねえ」

母に言われて気がついた。

 

私と階段の思い出でした。